2015年12月6日日曜日

僕たちは風の中


東京を見渡せるバルコニーに立ち煙草を吸っている。
びょうびょうと冬の風が吹いている。

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家具業界に身をおいて18年。
いつの間にかそれなりの立場になっていた。

そもそも僕らはアウトローの色が強い集団だ。
しかし今、
僕らはなぜか正統派のど真ん中にいる。
そして、たくさんの人から未来を嘱望されている。
この笑えない状況はどうして生まれたのか。

自分たちを縛る窮屈なルールが嫌で上を目指した。
上に行けば行くほどわかる。
上にはさらに上があるのだ。
空気も薄い。

理想はさらに大きな理想を生む。
そしてやっかいなことに、
さらなる理想の手がかりは常に手の届くところにある。

だから手を伸ばす。
掴む。
重い身体を上に引っ張り上げる。

そしていつしか、
その作業に恍惚となり黙々とこなす自分たちを発見する。
どんどん技術が上がってくる。
より難易度の高い登攀に夢中になる。

ある時。
過酷な雪山の微かな出っ張りで身体を休めていて、
ふと思う。
登ってきたルートを見下ろしながら、
ふと我に帰る。

なぜだ?
と己に問いかける。
僕たちはどうしてこんなところにいる?

「僕らは望んでここにいるのか?」

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僕はこの瞬間の「なぜ?」に対する僕らなりの答えを、このブログを読んでいただいている皆さんに伝えておきたい。

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僕は思う。

僕らが興した会社が、その瞬間、
ついに僕たちを追い越してしまったのだと。

ウチの会社は生きていたのだ。
生きているどころか、いつの間にか知恵を持ち、一人で判断し、未来の歩みの進路まで自ら決めるほどに成長していたのだ。

会社が小さい時はいい。
しかしある一定以上大きくなると、
そういうことになるのだ。

今、会社はこう思っている。

「野田たちが何を望むかなんて関係ない。私が行きたいからさらに高みを目指すのだ。それを邪魔するならお前らとて必要ないぞ」と。

こうなると会社はもう僕らの会社ではない。
僕らが会社の一要素
つまり・・・。
いつの間にか僕らが会社のモノとなっていたのだ。

そう。
この先僕らにできることは、初心に従い、力のかぎり、この会社の手綱をコントロールするだけだ。


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幼年期の終わり。

会社が真の会社としての産声をあげたこの時を。
僕らは風に飛ばされぬよう、
自分たちの身体をただ抱きしめるのみだ。

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煙草を消す。
いつしか東京は夜景に変わっている。

僕は底知れない恐怖を感じながらも

しかし心では思っている。

「のぞむところだ」

そう決意している。