2015年12月10日木曜日

夢とリアリズム


経営者の資質の話。

ドリーマーはリアルから目をそらす。
リアリストはドリーマーを軽視する。
それぞれの経営道が指し示す先は、いずれにしても袋小路だろう。経営者として大成するとは思えない。

「夢とリアリズム」。
その両方を持ち得て初めて、経営者は名経営者足り得るのだろうと思う。

熱い情熱で行動し、同時に冷徹な計算で処断を行う。
そんなことができてしまう人は、数こそ少ないが、確かにこの世に存在する。

しかし、はっきり言っておきたい。
相反する二つの概念が心の中で衝突する、規模にもよるが、その衝撃を耐えることのできる人など、もはや常人ではない。

意識してそれをできる人は類まれなる努力の天才だ。
意識しないでそれができる人はおそらくある種の狂人だろう。

例えるなら
家康と信長の違いに似ていると思う。



2015年12月6日日曜日

僕たちは風の中


東京を見渡せるバルコニーに立ち煙草を吸っている。
びょうびょうと冬の風が吹いている。

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家具業界に身をおいて18年。
いつの間にかそれなりの立場になっていた。

そもそも僕らはアウトローの色が強い集団だ。
しかし今、
僕らはなぜか正統派のど真ん中にいる。
そして、たくさんの人から未来を嘱望されている。
この笑えない状況はどうして生まれたのか。

自分たちを縛る窮屈なルールが嫌で上を目指した。
上に行けば行くほどわかる。
上にはさらに上があるのだ。
空気も薄い。

理想はさらに大きな理想を生む。
そしてやっかいなことに、
さらなる理想の手がかりは常に手の届くところにある。

だから手を伸ばす。
掴む。
重い身体を上に引っ張り上げる。

そしていつしか、
その作業に恍惚となり黙々とこなす自分たちを発見する。
どんどん技術が上がってくる。
より難易度の高い登攀に夢中になる。

ある時。
過酷な雪山の微かな出っ張りで身体を休めていて、
ふと思う。
登ってきたルートを見下ろしながら、
ふと我に帰る。

なぜだ?
と己に問いかける。
僕たちはどうしてこんなところにいる?

「僕らは望んでここにいるのか?」

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僕はこの瞬間の「なぜ?」に対する僕らなりの答えを、このブログを読んでいただいている皆さんに伝えておきたい。

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僕は思う。

僕らが興した会社が、その瞬間、
ついに僕たちを追い越してしまったのだと。

ウチの会社は生きていたのだ。
生きているどころか、いつの間にか知恵を持ち、一人で判断し、未来の歩みの進路まで自ら決めるほどに成長していたのだ。

会社が小さい時はいい。
しかしある一定以上大きくなると、
そういうことになるのだ。

今、会社はこう思っている。

「野田たちが何を望むかなんて関係ない。私が行きたいからさらに高みを目指すのだ。それを邪魔するならお前らとて必要ないぞ」と。

こうなると会社はもう僕らの会社ではない。
僕らが会社の一要素
つまり・・・。
いつの間にか僕らが会社のモノとなっていたのだ。

そう。
この先僕らにできることは、初心に従い、力のかぎり、この会社の手綱をコントロールするだけだ。


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幼年期の終わり。

会社が真の会社としての産声をあげたこの時を。
僕らは風に飛ばされぬよう、
自分たちの身体をただ抱きしめるのみだ。

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煙草を消す。
いつしか東京は夜景に変わっている。

僕は底知れない恐怖を感じながらも

しかし心では思っている。

「のぞむところだ」

そう決意している。


















2015年12月3日木曜日

祭りのあと


AREAの新作家具の展示会が終わった。

500人を超える大盛況のパーティだった。

今時ありがたい話だ。

来てくれた皆様に感謝。

是非また来年お会いしましょう。

来年はさらにいい家具を作ります。

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さて、その後はまったりとした平穏な日々が続いている。

しかし、今後春に向けて、「金沢」店、「AREA本店4号店」「(まだ内緒)」店、「(まだ内緒)」店などの新規直営店の出店ラッシュが始まる。

たいへんだ。

たいへんだが楽しい。

自分たちが作ったモノが世に広がっていく。

これ以上にわくわくすることを僕は知らない。

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どうして会社を大きくしたいの?

と最近ある人に問われた。

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自分が作った歌を恋人だけに聞かせる人もいれば

ライブハウスで50人くらいに聞かせる人もいる。

武道館いっぱいの人々に聞いてほしい人や

ワールドツアーで世界中に聞かせたい人もいる。

そんなイメージでしょうかと答えた。

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(それができるかできないかは実力や時の運次第だがそれはまた別の問題だ)

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価値観の多様性。

どれも間違いじゃない。

でも僕らはよりたくさんの人に僕らが生んだ家具を使ってもらいたい。

そのためならどんな努力も惜しまない。

そう思っている。

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祭りのあと。
冬の始まり。

小雨の外苑西通りを自転車で走りながら

今日はそんなことを考えた。